お前、わかりやすい!!/(2006年・日展)
トーゴー:では、第四科の工芸美術を鑑賞しましょうか。
ハロルド:この辺りから、ちょっと難解にならへん?
トーゴー:素材が多様で、その素材の特色を生かし、それを通していかに表現するのか? が、鑑賞のポイントでしょう。
素材に何を用いているのか、どのような技法で制作しているのかなど、素材の特色を生かしながら、形・色・模様・テキスタイルなど作家の感性による工芸美術独特の雰囲気を楽しみましょう。
ハロルド:素材、素材って、そんなに色々あんのけ?
トーゴー:観れば、わかるよ。
ハロルド:ほんだら、工芸鑑賞始めましょうか。
トーゴー:今年の奥田小由女氏はどう?「愛の誕生」(人形)。
ハロルド:これだけ、なんで、アクリルケースに入ってんねん?
トーゴー:偉いからでしょ。評価額も高いし。
この世に生まれる新しい生命の誕生とは、なんと神秘的な事なのでしょう。
そんな「愛の誕生」を慈しみ、よろこびあう優しい想いが伝わってくる優れた逸品だよね。
ハロルド:また、肩書きで評価して・・・。
トーゴー:だから、そんな事しても、俺には何の得にもならないの! 利害関係ないし。
ハロルド:ケース無しで鑑賞したい。作品を生で観るのが真の美術鑑賞やと思うし。
トーゴー:いいこと言うね。それは確か。
まさに触れてみたくなるような感じを体感するのが美術鑑賞の醍醐味だものな。
ハロルド:この作品なんか、いいんちゃう。「潮の紋」(漆)並木恒延氏
白と黒の対比が印象的な作品やね。渚の流木は良いアクセントになってるな。
トーゴー:レベルの高い漆の技術を駆使した作品。もちろん表現も静の極みというべきか、打ち寄せる静かな波が作り出す自然の文様が印象的。
ハロルド:文部科学大臣賞やって。俺、観る目あるな。
トーゴー:自分で言うな。漆芸なら、この作品もいいね。「くさむら2006」(漆)小西啓介氏。
ハロルド:うぁ、凄い! まさに小宇宙やね。
トーゴー:草むらの内にある小宇宙。技法も多種多様でモチーフも色々。
彩り鮮やかな表現にうっとりするね。
ハロルド:ロマンティックっていうか、メルヘンチックやね。
トーゴー:「さくら(漆)」勝正弘氏も綺麗だね。
ハロルド:お前の好みわかりやすいわ。確かに美しい作品やけど。
トーゴー:漆で表現すると美しさの中にも重厚感がでるよね。桜かぁ。やっぱり日本の四季は良いねぇ。
ハロルド:俺は「染屏風泥象裂染〈風韻幻視〉」(染)山本唯与志氏の作品がええ。
トーゴー:「風韻」とはすぐれた趣の事。それがあたかも見える様を表現しているのかな。とても、幻想的な作品だね。
ハロルド:斬新な感性もええ感じ。染色表現においてモダンな感覚。
トーゴー:俺としては同じ染色表現ならこの作品が良いな。「深し秋」(染)鵜飼英夫氏
ハロルド:だから、お前の好みわかりやすいって!!
トーゴー:そう? だって、美しいものは美しいでしょう。
この、紅く優美に輝くモミジが静かに散っている表現がなんとも叙情的で・・・。
それに俺の中で、今、紅葉ブームだし!
ハロルド:お前の紅葉ブームはどうでもいいけど、
確かに純粋に綺麗な表現やな。まさに深まる秋を感じさせるな。
トーゴー:「凛」(染)も良いね。春日井路子氏。
ハロルド:ほんま、お前、わかりやすすぎやし!
トーゴー:だって、鮮やかじゃん。幸せな気分になる秀逸な作品だと思うよ。
ハロルド:確かに、華やかさの中にも、どこか気品を感じる作品やな。
それにしてもお前、桜と紅葉、好きやね。
トーゴー:そういえば、言えてるかも。言ってるじゃん、俺は日本の四季が好きなんだよ。
日本の風土が好きなの。日本という豊かな風土のなかで生かされてる喜びに、ありがとうと言いたい。
ハロルド:俺はこの作品なんかが好きやな。「変身」(漆)西塚龍氏。
トーゴー:月の光が何とも怪しいね。その月光に照らされた狐も先鋭的かつ幻想的表現でおもしろい。
ハロルド:なぜか、一匹の狐はお面をかぶってるんやなぁ。
トーゴー:ほんとだ!
ハロルド:何か不思議な物語性が、作品全体を通じて感じてくるやん。ええ作品やわ。
あっ、特選やって。俺って、やっぱり観る目あるんちゃう?
トーゴー:だから自分で言うなって!「出会い」(染)北島桂子氏の作品も良いね。大胆な構図がおもしろい!色も綺麗だし。
ハロルド:確かに。ほのぼのとした陽気な作品やね。これも物語性がある!
トーゴー:「白雨」(陶)桑原紀子氏はどう? 陶芸として・・・。
ハロルド:「白雨」って夕立か、にわか雨の事か?
トーゴー:大地に恵みの雨が降る悠久なる自然を陶芸表現で表したのでしょう。
大らかさの中にもシャープな感覚があって、現代的だね。
ハロルド:造形もシンプルやけど、かっこええしな。特選やって。
トーゴー:工芸美術を総評すると、正直、大変見応えがありました。
レベルも高く独創的な作品群が所狭しと並んでる感じがしました。
紹介しきれませんでしたが素材を生かした個性あふれる豊かな表現が多数あり、日本の伝統工芸が持つ力強いパワーを感じました。
次回は会場も移る事なので、第四科・工芸美術の陳列にも配慮を施し、よりいっそうの飛躍を期待します。
ハロルド:もともと工芸って、そういう芸術やけど、うまくいけば商品化できそうな作品が多かったなぁ。
To be continued.

