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2006年11月17日

千本ノック!!/(2006年・日展)

トーゴー:では、最後に東洋の芸術・書を鑑賞しましょうか?

ハロルド:書ははっきり言ってわからん!

トーゴー:じゃあ、とりあえず書の千本ノックだね。
鑑賞を重ねるうちにわかってくるでしょう。

ハロルド:だって、読めへんもん。

トーゴー:近年は、読めて親しめる書、「調和体」が盛んに書かれるようになってきたよ。現代日本の独自な文字生活・文字文化を表現している調和体作品は、今後、ますます期待だね。

ハロルド:調和体って何?

トーゴー:長くなっていいか? 説明。

ハロルド:うっとうしいから、手短かにしてくれ。

トーゴー:書には、漢字作品、かな作品、調和体作品、篆刻作品があって、漢字は大別して、篆書・隷書・楷書・行書・草書の五種類の書体があり、それぞれに書体そのものの特徴があるんだよ。作家はこのいずれかの書体を基本としてそれぞれの感性と個性による創作がなされ、作品表現をしてるんだよ。

調和体とは、簡単に言えば漢字とかなを交えて書く作品。現代文体を広範囲に題材とし、新しい書の愛好家の間で親しまれています。

俺が思うに日本の伝統や土着の文化が損なわれない為にも、日本ならではの書、調和体を日本固有の文化として尊重するべきだと思うんだけど、新傾向の書の形としてどう発展するのかが、注目されるところだね。

ハロルド:なるほどなぁ。では、第五科の書という芸術を拝見させて頂きます。

トーゴー:まずは「あおやぎ」杉岡華邨氏。


[あおやぎ] 杉岡華邨

ハロルド:・・・・・。

トーゴー:素直で自然な書だね。それでいて格調高い!かなの文化は日本特有のものだしね。

ハロルド:ほんまに、わかってるんけ? また、肩書きか!

トーゴー:確かに書作品だけは、そういった目でどうしても観てしまうな。

ハロルド:今から、肩書きで鑑賞するのはやめよう。
俺は、この作品がええと思うわ。「林居雜言寄同志」(円理詩)大重均石氏。


[林居雜言寄同志](円理詩) 大重均石

優美な楷書でわかりやすく、筆遣いが色っぽい。

トーゴー:特に細く軟らかい雰囲気が艶っぽいね。
俺は、個人的に「弘麗」市澤静山氏がいいね。


[弘麗] 市澤静山

書の雰囲気と名前から、故・上條信山氏の直系だと推測するが、この迫力のある書は現在、なかなかいない。師匠を超える表現にまで今後、更に昇華してほしいと願う作家だね。

ハロルド:墨が飛び散ってるな。

トーゴー:いっぽう、「風」はどう思う? 中野北溟氏。


[風] 中野北溟

ハロルド:私をつきぬけ響く風のように・・・。読めた!!

トーゴー:可読性もあっておもしろい表現だよね。おそらく自詠の句でしょう。

ハロルド:鈴木みのる的、叙情性があるな。

トーゴー:鈴木みのるは「風になれ」だろ!マニアックなプロレスファンしかわからんぞ!
ところで「韋應物詩」辻元邑園氏はどう?


[韋應物詩] 辻元邑園

ハロルド:どうも何も、なんのことやらさっぱりわからん。勉強不足ですいまへん。

トーゴー:確かに俺も、実は何書いてあるかわからないんだけど、書表現として、リズミカルで面白い。
書は学んだ古典やさまざまな技法によって、肉体と精神が一体となって題材である詩を通じて具現化されるものだとしたら、作家はまさに作曲家。
そう言った意味で、墨の強弱のバランスがとても気持ちのよい秀逸な作品。

ハロルド:なるほど。言われてみたら、リズミカルやね。自在に緩急を操る野球のピッチャーみたいなもんや?

トーゴー:そうかもね。芸術的なピッチングって言うものな。 
一風変わって、「李白詩」中野玉英氏も力強くていいね。


[李白詩] 中野玉英

故・西川寧氏を彷彿とさせる迷いの無い書表現だね。

ハロルド:西川寧って誰?

トーゴー:書家として初の文化勲章受賞者で学者としても論著が多いよ。読んで、勉強しなさい。

ハロルド:とりあえずまた、今度で。ところで俺、篆刻には興味あるねんけど。

トーゴー:「游于藝」小林斗あん氏は?


[游于藝] 小林斗あん

ハロルド:九十才なん? お歳のわりには、遊び心溢れるおもしろい表現やね。篆刻家って書も上手なんやね。これって当たり前の事なん?

トーゴー:恥ずかしながら俺も初めて知った。氏は「藝」という字の本義を判って欲しいと思い論語のこの句を表現したんだって。

ハロルド:「芸」じゃなくて「藝」なんや。九十にして深いよなぁ。

トーゴー:「歌の調べ」大澤城山氏の調和体はどう思う?


[歌の調べ] 大澤城山

ハロルド:北原白秋の文やな。

トーゴー:白秋の語句を題材に格調高く書き上げ、気品があるね。
それでいて、おもしろい表現で行間のバランスも良い秀作だね。

ハロルド:書くのに苦心したやろうな。特選やって。

トーゴー:書を総括すると、ある程度仕方のない事だと思うのですが会派色や師風が強く、個人が古典に対峙し、その中でオリジナリティー溢れる創作表現を試みている作品が少なく感じました。今後は作品の魅力、要するに感動できる作品かどうかが大きなポイントになってくると思います。
調和体といえども格調美の追求がテーマになって、初学には向かないでしょう。そこでここでも、古典とのかかわりが必須になってくる訳です。
書とは古来から、第一に格調を重んじる芸術です。その中で、自分の書風を形作る。難しい事だと思いますが、次回はさらなる秀作群を期待します。

ハロルド:書こそ、日本が世界に誇る崇高な芸術なんやね。

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