幸福感に包まれる絵/銀座
ハロルド:日動画廊に、行かへん?
トーゴー:良くも、悪くも、日動画廊の存在を無視出来ないしね。
前回、一人でフラッと入った時、梅原龍三郎氏の作品と出会った。
そのような経験も悪くないよ。
ちょうど、「ミニヨン展」という歴史に名を残した巨匠から
現役の人気作家までの小品絵画の展示会が開催されている。
ハロルド:俺は、ニュートラルな目で観るから!
巨匠とか、人気作家とか、全く関係無いし・・・。
トーゴー:本来はネームバリューとか、画壇での評価、
その作家の生き様や歴史的にどうとか、そういった知識をつけて観る事の方が
作品にとって、失礼にあたるよね。
先入観で鑑賞する愚かさ。日本人は多いんだけど。
ハロルド:作品は作品として、作品そのものを感じなアカン。
トーゴー:日動は、やたら名前を押してくるけど。
ハロルド:いい作品は、良い。いくら高名な作家でも駄作は駄作でええんちゃうの。
トーゴー:言う通り。どうしても美術って、
なんでも鑑定団みたいに観てしまう事がある。良くない事だよなぁ。
考えてみたら真贋論争とかも、バカバカしいし・・・。
自分が感動していたら、それでいいと思うけど。
ハロルド:それはそうと、日動画廊って思ってたほど敷居が高く無かったわ。
小品展やから、意外とリーズナブルな値段の作品もあるし・・・。
部屋に飾るのなら、このくらいのサイズがちょうどええんちゃう。
トーゴー:巨匠や人気作家の小品が、これだけ多く並ぶのも珍しいね。おもしろい。
ハロルド:ざっと観た中で、森田茂氏の花の絵が、一番良かった。
トーゴー:日展では、あまり評価してなかったじゃん。
というか、存在すら知らなかったんじゃないの?
ハロルド:いや、この花の絵には念がこもってる!
他を圧倒する迫力がある。森田作品が放つ力強さみたいなものに感動したわ!
トーゴー:なるほど、一見、乱暴に描かれたような花だけど、
言われてみれば、この画廊全体を引き締めるぐらいのパワーを感じるね。
これだけ玉石混合としたなかで確かに、目を引くものなぁ。
ハロルド:いやぁ〜、ええ勉強になったわ。
頭で観るんじゃなくて、心で鑑賞する事が大切やな。
トーゴーは、肩書きや、歴史的価値とかで判断する傾向にあるな。
美術鑑賞として、本来あるべき姿じゃない!
もっと、スピリチャルに鑑賞してみては?
トーゴー:もっともな意見、ありがとう。
どうしても、教科書的な解釈をしようと頑張ってしまうのが
俺の悪い癖だね。ハロルドさんと鑑賞する事によって、
だんだん、俺も正しい美術鑑賞方を身につける事ができそうだな。
次は、趣をガラリと変えてGGGに行こう。
ハロルド:ギンザ・グラフィック・ギャラリーね。
トーゴー:企画展「日本のデザイン黎明期の証人・早川良雄」
ハロルド:まだ、日本の伝統が感じられるポスターやね。
トーゴー:亀倉雄策氏なんかと日本のグラフィックデザインを開拓した、凄い人なんだね。
逆に言えば、少し羨ましい気もする。
グラフィックデザインという言葉もない、いわば原始時代。
今は、皆、コンピューターじゃん。
この時代は、まだ、レタリングとかしてる。
からす口、使ってね。作ってて、楽しかっただろうなぁ。
ハロルド:カロン洋裁って、描き文字が気になる。レタリング下手やし・・・。
そもそも、カロン洋裁ってなんや? いまでいうファッション専門学校か?
トーゴー:そうみたいだね。早川氏が近鉄を退き、
フリーになろうとしたが、無計画で五里霧中の頃、
事務所を持てる費用もなくて、その時、たまたま知り合いだったカロン洋裁の校長が、
無償で二坪くらいの部屋を使わせてくれたらしい。
家賃のかわりとして、お礼の為に生徒募集のポスターを作ったという。
でもそれが、後に評価されるんだよなぁ。何が幸いするかわからないものだね。
ハロルド:我々はいわゆる'70・'80年代の、ちょっぴり過激なグラフィックデザイナーに
憧れたりしたもんやけど、早川氏のグラフィックワークには、
そこはかとなく、品が漂うな。女性の顔の絵にしても。
トーゴー:この時代のデザイナーは、イラストレーターでもあり、
コピーライターも兼務してたりする。まだ分業化されていなかった。
ハロルド:だから、女性の顔の絵のシリーズなんかが生まれる訳やね。
トーゴー:デザイナーの感性で描いた「女性の顔」だよね。
ハロルド:造形的にピカソの影響が見受けられる。
トーゴー:確かに、ピカソやマチスといった巨匠の絵の影響はあるが、
俺は、早川氏の絵には印象派絵画のような開放感を感じる。
それは、形から入った絵ではなくて、色が形を作っているからだろう。
ハロルド:優しさやあたたかさも感じる。
トーゴー:コンピュータ世代じゃないからね。
デジタルが何を追い求めているかと言えば、究極は「アナログ」
だから、結局、早川氏のデザインみたいに
絵筆を持つようなデザインが目標だったりする。
自分の感性と時代の歯車が合うところは才能によるものだけどね。
コンピュータで作ったものじゃないから、体温が感じられるというか・・・。
何とも言えない優しさ、あたたかさ、ぬくもりみたいなものが
伝わってくる。
ハロルド:なるほど。K-1やプライドにはない、
「幸福感」にプロレスが包まれているのと、一緒の事か?
トーゴー:一緒だね〜。プロレスファンにはわかる例えだけど、
一般の読者には、わかりづらいよ!
To be continued.

